ストーリー
高山植物を撮りに入った山で見つけた頼りないその手は、子供のものなのかひどく小さく見えた。
――もうすぐ、手が……届く。
眼の前が急に青空になったのと、
足を泥にとられて滑ったのだと気が付くのはほぼ同時だったと思う。
伸ばした手は空を切り、掴んだ植物の弦は無情に切れる。
全身の痛みで失神する直前に、紫陽花畑の世界で淋しく打ち捨てられていた、陶器のような白い腕が瞼の裏によぎった。
高山植物を撮りに入った山で見つけた頼りないその手は、子供のものなのかひどく小さく見えた。
――もうすぐ、手が……届く。
眼の前が急に青空になったのと、
足を泥にとられて滑ったのだと気が付くのはほぼ同時だったと思う。
伸ばした手は空を切り、掴んだ植物の弦は無情に切れる。
全身の痛みで失神する直前に、紫陽花畑の世界で淋しく打ち捨てられていた、陶器のような白い腕が瞼の裏によぎった。